アニスの今日の海外ドラマ

海外ドラマ20年、国際結婚10年の働く40女です。今日も勝手なネタバレ感想をブツクサ書いてます。

「アメリカン・クライム・ストーリー/ヴェルサーチ暗殺」仕掛けが上手い!テーマ性のあるドラマ

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*前半はネタバレなしの感想とキャスト紹介。後半はネタバレありの感想です。

スターチャンネルで放送されてた「アメリカン・クライム・ストーリー/ヴェルサーチ暗殺」ですけど、正直、始めは面白そうじゃなくて手が伸びなかったんですよね。

だって始めから犯人分かってるし、ヴェルサーチが殺される結末も分かってるし、FBIや警察との手に汗握る逃亡劇があった訳でもない・・。

なので、「この有名な連続殺人事件を新たな解釈で描く」と言われても、今一つ興味を引かれないし何をどう期待していいのか分からなかったんです。

実際ちょっと2、3話くらいまで見てきても、「うーん、やっぱりつまらないかも・・。」という感じで、感情移入できるキャラもいないし、テーマも見えない・・。

サスペンス要素も緊張感もないし、ただただ妄想型のおしゃべりサイコ野郎の残忍な殺害現場を見せつけられるだけで、なんとも胸糞悪い・・。

でもエミー賞に多数ノミネートされてる注目作品だし、これは絶対スルーできない!何かあるに違いない・・、と、気合いで見続けてみました。

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巻き戻し型の描き方が上手い!

そしたら、急に5話くらいからぐわ~っと面白くなってきました。

それに一役買っているのが、時間を遡って行く手法

これがなかったら、実際のところ「ゲイ差別に苦しむ人々の孤独な闘い」というテーマが見えてきても、ちょっと退屈なドラマになっていたかも。

 

このアンドリュー・クナナンは5人の男を殺害してますけど、一番最後のヴェルサーチを殺す場面が第1話の冒頭に来て、毎回少しずつ時間を巻き戻す感じで、犯行の軌跡とその経緯が描かれて行きます。

(肝心のヴェルサーチはあんまり出てこないけど、印象的なシーンで所々で登場。)

始めはこのクナナンがあまりにクソ過ぎて、感情移入どころか見てるのも嫌なくらいなんですけど、ヤツに殺されてしまう人々の描写が鮮やかで感動的なんです。

特に2人のゲイの若者が必死に人生を掴み取ろうとする健気な姿と、その命を無残にも軽々しく奪っていくクソ野郎クナナンとの不幸なクロスオーバーは見ていてかなり衝撃的。

一瞬の偶然の出会いと心の隙が原因で、これほどまでの代償を支払うことになるなんて、なんとも割が合わなくて辛いのです・・。

 

そうして一人一人の被害者との出会いや交流なども巻き戻し方式で描かれていくので、「あぁ、そうだったのか~、そういう訳か~」と、自然と謎解き要素が増えて面白味が増すんですね。

クナナン自身の栄光と挫折もジェットコースター並みの起伏があって退屈しないし。

そして、あれ・・?まさか、まさか?

奴の子供時代まで巻き戻って描くつもり?!と終盤は奴の人格形成の過程まで種明かししてくれます。

コイツがどんだけ悲惨な幼少期を過ごしていようと絶対に同情する気はないよ~!と鼻息荒く見た子供時代もまた壮絶で想像以上にキレキレでした・・。(真実かどうかは知らんけど・・)

 

同性愛者として生き抜いた被害者たち

90年代、エイズが蔓延したこの時期はゲイにとって社会的差別や迫害を強く受けた過酷な時代。そんな中それぞれに偏見と闘い、自己の生きる道を見出そうと気高く闘ってきた彼らの命を思うとなんともやりきれない・・。

ヴェルサーチ自身もゲイであることを公表し、長年の恋人と一緒にインタビューに応えるなど、同性愛者の市民権獲得へ尽力したセレブの一人だったそうです。

ちなみにドラマではHIV陽性であったことも描かれてますけど、この事実に関してはヴェルサーチ側は否定してるんですよね。

ちなみに男娼として生きてきたクナナンもエイズに冒されていた可能性があるらしいです。

 

どこまで真実?ヴェルサーチ側はお怒りらしい・・

このドラマ化に関しては妹のドナテラさんをはじめ、「ヴェルサーチ家」の人々はかなりお怒りらしいです。

ドラマの製作側は20年前に出版された「Vulgar Favors」を原作として忠実に描いていると主張しているらしいのですが、ヴェルサーチ側は「そもそもこの本自体が全く事実無根で、当事者への取材もなく、センセーショナルなストーリーを書き上げただけ」と言い切ってますので平行線ですね。

ただ、ドラマが情緒的に激しく描いているのは犯罪者側のクナナンとその被害者たちがメインで、ヴェルサーチや妹のドナテラに関しては相当な配慮と敬意を持って描こうとしているのが伝わってきます。

ヴェルサーチ本人も勇気ある人格者として劇中に存在していたし、ドナテラも兄を慕い、力強く繊細に「ヴェルサーチ」の看板を背負っていこうとする姿が素敵でした。

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登場人物とキャスト紹介

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男娼殺人鬼アンドリュー・クナナンを演じたのはダレン・クリス。

彼自身はストレートらしいのですが、長年「glee」のブレイン役で鍛えたゲイっぽい動きやダンスが秀逸で華がある。

ゲイのブレイン役を演じたことをきっかけにLGBTの権利をサポートしているそう。

面白いことに彼自身もフィリピンや中国の血を引いているらしいです。(見えないなぁ・・)

IQ150近い知能を持ちながらも、驚くほど幼稚なメンタリティを持つ不可解な猟奇殺人者クナナン。

これほどまでに負の要素の多い役柄を最後までブレずに演じ切ったダレンはエミー賞ノミネート。

 

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ヴェルサーチ役はエドガー・ラミネス。

情に厚い男ヴェルサーチを落ち着いた存在感で演じ、エミー賞ノミネートされてます。

なんたって顔が似てる。

 

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やはりエミー賞にノミネートは、ドナテラさんになり切った我らがペネロペ。

ペネロペってこんなに声低かったっけ。

これ程のセクシー美女に演じてもらえたらドナテラさんも悪い気しないでしょ。

 

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ヴェルサーチの長年の恋人アントニオを演じているのは、世界的一発屋のリッキー・マーティン!懐かしい!

へぇ、いつから俳優始めたんだろ?

確かに演技には素人っぽさが残ってるんですけど、それがこのアントニオさんの微かな胡散臭さをほんの少~し匂わせていて絶妙でした。

しかし、このドラマのキャスティングした人天才だわ。この人もエミー賞ものね。

なんて書いたところで、今気が付いたけど、リッキー・マーティンも助演男優でノミネートされてた!うわ、素人っぽいなんて書いちゃったけど、そこも含めての計算だったらこの人凄いわ。

ご本人もゲイ。

 

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運悪くクナナンに惚れられてしまう若き建築家デイビッド。

控えめな笑顔が切なすぎて、見てる私たちもヤラれます・・。

 

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元海軍将校のジェフ。

不器用ながらも高い志で道を切り開こうとする姿に心打たれる。

強烈なまでにピュアな精神を見事に演じたフィン・ウィットロックもやはりエミー賞ノミネート。

 

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うわ、 懐かしいマイケル・ヌーリーがパトロン役で出てた!

「フラッシュダンス」でセクシーオヤジを演じていたのは35年前。

70代でもまだ結構いい男だなぁ。 

 

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余談ですが、このドラマの8話で監督デビューを果たしたのは「ホワイトカラー」のマット・ボマー。

彼自身もゲイであることを公表していますが、こうしたLGBTの権利獲得に懸ける人々の熱意が結集してできたドラマだと言っていいんでしょうか。

 

という訳で、始めはイマイチ魅力が見えなかったものの、途中から物凄いパワーとテーマ性持ったドラマとして爆発してくれたのがこの「ヴェルサーチ殺害」。

一人の悲しい男を巡って、どれだけの高貴な命が無意味に奪われたのか・・。その事実に心を痛め、改めてLGBTとして生きることの難しさ、彼らの求める当然の権利がいかに尊いものかを認識することになりました。

最終回も色々含みを持たせる演出が多くて、なかなか全部の意図を解釈するのが難しい感じでしたけど、分かる人には分かるんでしょうか・・。

機会があれば、ぜひ本腰を入れて最後まで見て頂く価値のある全9話でした!

 

*この先はネタバレありの感想になります。

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デイヴィッドとジェフが気の毒過ぎる・・

輝く未来のある若者がこんなしょうもない男に殺されるなんて、本当に残念・・。

やっぱり危険な異常者には下手に関わらない方がいいのね。

これまで自身の辛い立場に悩んできた彼らだからこそ、クナナンの心の痛みに共鳴し、同情せずにはいられなかったのだろうけど、あそこまで劣等感で凝り固まり、負の方向に振り切っちゃってる男には結局何も届ず、逆恨みしか返ってきませんでした。

ジェフは孤独ながらもしっかり堅実に働いて叔父さんになる日を楽しみにしてたのにね・・。

あの後の家族の事を想うとなんともやり切れないわぁ・・。

 

デイヴィッドは本当に爽やかな努力型青年で、古臭い考えを持つ父との心の交流には涙が出ちゃいましたね。

死に際の走馬燈が、幼い頃に父と猟に出て、寒い山小屋であったかいコーヒーをもらうシーンでした。

全く違う人生を歩むことになる父子ですけど、かつて共有した静かな時間がいかにデイヴィッドにとって大切なものだったのかが分かります。

 

クナナンは被害者でもあるのか?

これですよね。

デイヴィットやジェフが堅苦しいながらもまともな家庭で育ったのに対し、クナナンは一体どんな家庭環境で育ったのか?

その興味を掻き立てておきながら、満を持して登場したのがあのお母ちゃん。

うっわ~、クナナンも凄いけど、お母ちゃんはもっとぶっ壊れてるわ~!と愕然・・。

妄想型の息子が出来上がったのは、このお母ちゃんの心の闇が原因だったのか?

と思わせておきながら、その後に登場したフィリピン父ちゃんはそれ以上にぶっ壊れてました!

 

強烈!嘘みたいな本当の話??

この父ちゃん回も面白かったですね~。

何が一番ウケたかって、ホテルでのデートでデイヴィットに話した突拍子もない家族の話が実は本当だったこと!

あの時、心を開いて語り合おうとしたデイヴィットは、荒唐無稽なクナナンの話に「また奴のホラ話が始まった・・」と失望して完全に見限るんですけど、まさかのまさか、ちゃんと普通に話していたなんてね。

クナナンが最終的にそれほど憎めなくなってしまう理由があの世間知らずな無邪気さでしたけど、あの時嬉しそうな顔で自分の父や幼少期について真実を語っておきながら、なぜかデイヴィットには完全にシャットダウンされてしまうという不幸。

何しろ、その誤解を招くほど突拍子もない生い立ちを過ごしたクナナン少年には非がない訳で・・。

だけど、そこがサイコを語る時に難しいところで、不幸な生い立ちのせいでこんな人間が出来上がり、結果的に犯罪に走らせた・・と弁解されてもやっぱり同情はできないんですよね。

逆境を糧に、努力と才能で成功を手にしたヴェルサーチや、平凡ながらも孤独な闘いの果てに自分の道を掴み取ろうとしていた若者二人を対照的に描かれると、クナナンはやっぱり卑怯で自己顕示欲の強いだけのお喋りクソ野郎としか言いようがないのです。

 

実際のところ、エイズにかかって絶望したクナナンが、手あたり次第道ずれにしようと周囲の男たちを5人殺害したとか、ドラマ意外の解釈も色々ありそうですけどね。

 

そんな感じで、衝撃的ながら心に染み入る場面も多いこのドラマ。

丁寧に丁寧に作られているだけに、人によっては色々な感じ方ができそうでしたね。

 

ちなみに最後に自殺を図ったアントニオさんは現在もお元気でいらっしゃるのようなので、あの後病院で胃洗浄をして助かったのでしょうね。

やっぱりドラマでの描かれ方にはご不満なようです。

でも死を持ってして(未遂だったけど)ヴェルサーチへの真実の愛を証明しようとしたんですから、美しく気高く描かれたと言っていいんじゃないんですかね。(助かったけどね。)

色々ネットで検索すると、本物のクナナンや関係者の写真なども出てくるのでそれも楽しかったりします。

(ドナテラさんとペネロペを並べた写真とか結構見応えあったわ。)

という訳で、やっぱりエミー賞にノミネートされるだけの「何か」は確実にあった「アメリカン・クライム・ストーリー/ヴェルサーチ暗殺」。

映画なんかでもLGBT関連の映画はアカデミー賞を受賞しやすかったりしますので、今回のエミー賞もリミテッド部門でかなり可能性が高いかもしれませんね。